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さくらのIoT

この記事は2018年10月に公開した内容を編集して掲載をしております。2018年9月6日、北海道胆振東部地震により被災された皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。去る9月6日の北海道胆振東部地震において、北海道全土に亘って大停電が発生したことは皆様ご存知の事だと思います。当社は札幌の北へ約10kmに位置する石狩市にデータセンターを構えておりますが、データセンター事業以外にも、石狩市とIoT技術を軸とした防災や地域活性化に向けての包括協定*1を結び、取り組んでいます。今回はその取り組みの中で地震・大停電が発生し、それによって得られた モノからの情報 が非常に興味深かった為、本記事にてご紹介します。

取り組みについて

例外無く当社の石狩データセンターでも停電が発生し、非常用発電機による給電を行っていました。停電直後の発表によれば復旧には1週間以上を要するという絶望的な報道もさることながら、お客様はもちろんのこと社内からも復電情報を求める声が多数挙がりました。世耕経産大臣がTwitterで発電所の再稼働や北電の復電情報を積極的に発信している姿は印象的で、たくさんの人がこれらのツイートに救われたと思います。ですが、復電情報は地域レベルで見ると粒度が大きく、上記ツイートのようにおおよそは市単位であり、加えて更にその市町村の一部であるなど詳細な情報がありません。復電しても分単位でリアルタイムに情報を得る手段が無く、どうにか石狩の電力事情を知ることはできないかと考えていると、ふとLPWAの取り組みを思い出しました。

求められる復電情報

例外無く当社の石狩データセンターでも停電が発生し、非常用発電機による給電を行っていました。停電直後の発表によれば復旧には1週間以上を要するという絶望的な報道もさることながら、お客様はもちろんのこと社内からも復電情報を求める声が多数挙がりました。世耕経産大臣がTwitterで発電所の再稼働や北電の復電情報を積極的に発信している姿は印象的で、たくさんの人がこれらのツイートに救われたと思います。ですが、復電情報は地域レベルで見ると粒度が大きく、上記ツイートのようにおおよそは市単位であり、加えて更にその市町村の一部であるなど詳細な情報がありません。復電しても分単位でリアルタイムに情報を得る手段が無く、どうにか石狩の電力事情を知ることはできないかと考えていると、ふとLPWAの取り組みを思い出しました。

モノの声と携帯電話インフラの生命力

ここからは、実際のデータに基づく推察を交えてお話します。LPWAの水位センサは、下図の通り石狩市北部に位置する浜益区において運用されており、6つの川にそれぞれ水位計測器とゲートウェイ装置が1台ずつ稼働しています。

川名 ゲートウェイ設置場所 電源
床丹川 屋外 鉛蓄電池(バッテリー)
幌川 室内 商用電源(100V)
茂生川 室内 商用電源(100V/非常用発電設備あり)
於札内川 室内 商用電源(100V)
毘砂別川 室内 商用電源(100V)
送毛川 室内 商用電源(100V)

表は地理的に北側から順に南下するように並べました。床丹川については鉛蓄電池による給電、それ以外は全て商用電源による給電です。床丹川も商用電源化する計画があるのですが、今回はむしろバッテリ運用によることでしか得られなかったデータもありました。計測された水位データはさくらのIoTプラットフォームを通じてインターネット上にあるサーバへ蓄積されたのち、Webアプリにより可視化されます。まずは、地震発生直後のグラフをご覧ください。(水位計測器の筐体内温度グラフ)

複数のグラフが一斉に途切れているところが地震発生である3時7分を表しているのですが、1本だけ切れていない青色のグラフがあります。地震発生と同時に商用電源から給電しているゲートウェイ装置は全て止まってしまいましたが、青線が示すゲートウェイ装置は蓄電池から給電されており、その後も何時間か元気に動いていることが分かります。少しだけ時間軸を進めたグラフがこちら。

地震発生から約8時間ほど時間を進めた所で、伸びていた青いグラフ(床丹川/バッテリー給電)が切れてしまいました。これは推察になってしまいますが、 最寄りの携帯電話基地局も地震直後に商用電源供給が停止したものの、附属の蓄電池設備で8時間は基地局の電力を賄っていたお陰で、ゲートウェイは通信できていたのではないか と考えています。携帯電話設備やPHS設備は、電気通信事業法における事業電気通信設備規則(昭和60年郵政省令第30号)の第3条[適用範囲]及び第11条[停電対策]で自家発電設備や蓄電池など、これに類する停電対策を行うように定められているため、この基地局も対策がされていたのでしょう。残念ながら他の河川についてはゲートウェイ装置が全て商用電源給電であったことから、復電まで通信が回復することはありませんでした。水位計測器・ゲートウェイ装置ともにバッテリーで運用できていたからこそ、普段はひっそりと息を潜めている携帯電話インフラの、その生命力を垣間見ることができたのです。(そう考えると、「停電なう」とTwitterで呟けることも凄い事です)

復電の兆し

9/6 AM3:06に停電してから約16時間後、浜益南部の送毛川で動きが見られます。

驚く事に、9/6 PM19:10 突然送毛が復電しました。グラフにも描画されている通り、翌9/7のAM04:41に再度停電しましたが約10時間に亘って電力供給が行われたことが、グラフからも見て取れます。北海道電力の電力系統図(110kV以下)によれば浜益地区は北江別系統に属するようです。系統図を見ると送毛変電所の奥に浜益変電所が構えており、この 送毛が一時的に復旧した という情報により浜益地区電力復旧の希望が見えてきます。

電力回復

ついに9/8 AM1:21頃、復電の合図かの如く浜益に設置している水位センサから同時刻で一斉にデータが届きます。商用電源から給電しているゲートウェイからデータが中継されており、当該地域において復電したことが伺えます。

同日9/8 PM14:05、当社のデータセンターも特別高圧の送電が復旧し、約60時間と長きにわたる非常用発電機の運転を終え、完全商用電源による電源供給を行うことができました。

振り返り

今までのイベント情報を時系列に並べて見てみましょう。

何時何分にデータを受信したか否か だけでここまでの情報を得ることができました。これこそ モノのつぶやき と言うに相応しく、LoRaやLTE等の無線通信、バッテリー&商用電源という電力供給方法、適度な地理的分散、更には他社が運用する設備など、複数の要素をいくつもの組み合わせで利用したことが功を奏し、本来の目的である防災だけではなくIoTが持つ潜在的な力が発揮されたのではないかと思います。言ってしまえば、これらのゲートウェイをばら撒いて機器の電源状況を可視化すれば、設置場所が多ければ多いほど高精度・ピンポイントで停電情報が把握できるということを示しています。当社のさくらのIoT(当時のsakura.io)は通信部分に専用モデムとLTE回線を提供しているため、通信状況の確認(基地局のダウン等)も同時に活用できるでしょう。今回は副次的効果として停電情報を得ることができましたが、このように実際に取得しているデータとは「異なる情報」が取得できる可能性は、他にもありそうです。世界的に見ても飛び抜けて停電回数が少ない日本。IoTのチカラを利用して電力・通信事情を監視することだけが今回の解ではありませんが、高性能・高価なセンサーデバイスをいくつか用意して運用するより、安価で各々の性能は高くないけれども、それらを大量に設置し、データを収集・解析をすることで、前者より高精度かつ有用性の高い情報を得られることは間違いありません。さくらのIoTは、そんな方々も支えられるプラットフォームを目指しています。長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

参考
  • *1 北海道石狩市とさくらインターネット、IoTなどの情報技術を活用した地域活性化に関する包括連携協定を締結(当社)
  • 石狩市とさくらインターネット株式会社による情報技術を活用した地域活性化に関する包括連携協定の締結について(石狩市)
2018年10月公開、2023年2月更新